DATウォークマン TCD-D100/D8のカタログですが、実は第2版。というのもウォークマンのロゴに注目。
筐体は2代目ですが、何故かカタログ表紙は3代目。ウォークマンのロゴは2000年5月15日に変更に。
本カタログは更に1年経過しているので・・・少なくとも掲載機器は1年以上前に発売されたと云うこと。
あと本編下記に「あなたのヘッドホンの音量は大丈夫ですか。」という注意喚起文が追加されてます。
これも1999年以降にヘッドホンステレオのカタログに追記された項目でして、この頃にヘッドホンの
長期間使用による難聴が若年層にも広がったというのが問題視されたというのと、電車やバスでの公共の
場においてのヘッドホン使用者によるトラブルが多発、傷害事件沙汰にもなってしまったのもあって、
それらを未然に防ごうとメーカー側でも注意喚起をと云うことになったのです。
D8の併売期間が結構長いなあって思っていたのですが、本編の文面から察するに合点がいった。
D100はあくまで「ポータブル」、D8は「キャリアブル」という解釈だったのかと。
TCD-D100(1997.5発売) 発売当初は価格設定があったのですが(¥95,000(税別))、オープンプライスに。
要は店頭側で決められるというのがオープンプライスの意味ですが、実質は一応価格設定はあったりします。
筐体に関しては「レコーディングウォークマン並のサイズと、約290g(本体のみ)という軽量を実現」と
謳っていますが、これまでのように「最小・最軽量」という云い方はしていません。というのもTCD-D3以降
各メーカーがしのぎを削り小型のDATレコーダーを出してきており、遂に掌サイズの大きさのものを出したメーカーが。
それは意外にも日本ビクター・XD-P1。W77.8×H36.9×D119.1mm・354g・・・但し、本体のみ。
A/Dコンバーターとバッテリーは別ですが、ここまで小さくしてきたとはということで、負けじとソニーも
本気もとい、本機を出したということで。ちなみに本機はW80×H117.3×D29.2mm・365g(バッテリー、テープ込み)
A/D・D/Aコンバーターの方式に関しては特に謳ってないですが、TCD-D7(1993.2発売)以降の製品は
1bit・A/D・D/Aコンバーターの使用を謳っているので、本機種も該当するかと。
メカブロックはTCD-D8との比較で体積30%削減ということで新規開発。更に低消費電力化、単3電池2本で駆動可能。
シャーシもマグネシウムダイキャストを使用。軽量かつ堅牢性を兼ね備えることに。
更に今までなかったリモコン、しかも液晶表示付を付属。ヘッドホンジャックも不評だったマイクロジャックでは無く
ステレオミニジャックに変更。本体側の表示はエレクトロ・ルミネッセンス・バックライト付液晶に。
それと何と云ってもfs=44.1kHzでのアナログ入力録音対応。本機のみでCDのマスターテープが作成可能に。
なお、本機の姉妹機にPCM-M1というのが後程発売。(1997.10 価格:¥108,000(税抜))
違いは筐体の色(ブラックメタリック)と、スタートID機能の最小レベル設定が可能である点(-50~0dB:11段階)、
RECマージン表示の追加、それとマイクアンプで使用しているICの相違。
(PCM-M1ではSBMユニット・SBM-1で使用されたものと同じIC)
TCD-D8(1995.5発売) 発売当初の価格:¥77,000(税別) こちらもオープンプライスに。
前機種・TCD-D7(1993.2発売。発売時の価格:¥69,800(税別))と電気的特性に関しては変更ないのですが、
最大の違いはfs=44.1kHzでのアナログ入力録音対応になった点。それとヘッドクリーニング機構の追加。
あとは付属品の違い。D7では別売だったACアダプターがD8では付属に。クリーニングテープも付属。
価格差=付属品構成の差と云っても過言ではないかと。
それから本カタログからあるものが消えてます。それはスーパー・ビット・マッピング・ユニット・SBM-1。
そこでふと思ったのですがこのユニットを経由してアナログ→デジタル変換を行った場合、それはデジタル
記録扱いとなり、デジタルダビングが不可と云うことになるのか? わかりにくいかも知れませんが、
経由することでシリアルコピー符号が追加されてデジタルダビングが出来なくなるのかという話。
結論から云いますとコピー符号は付加されるということで、ユニットを介して録音されたテープから
デジタルコピーは出来ないということが判明されて、その後のクレームにより製造中止を余儀なく
されたということで、第2版のこのカタログからは消えました。
話は変わって、D100のコメントにも出てきたビクター・XD-P1ですが、A/Dコンバーターユニットは
別と書きましたが、それを上手い具合に仕立てたデジタルマイク・MU-Z1というのがオプションにあって、
まあ早い話マイクにA/Dコンバーターをつけた代物なんですが、これの最大の売り文句がSCMSフリー。
つまりこのマイクでA/D変換を行ってもコピー符号が追加されないという。(いろんな意味で)売れたのかな?
接続構成図、微妙に変わってます。まあDATレコーダーはD100に変更なのはともかくとして、
初版(1997.5)から2年経過してますのでポータブル機器の図柄が次のように変更です。
CDウォークマン:D-475→D-E01 MDウォークマン:MZ-R50→MZ-R900
また掲載内容も第2版ではTCD-D10及びテープの価格がオープンプライスに。DATプレーヤー・WMD-DT1も
生産完了により本編から消失。アクティブ・スピーカーもSRS-A91からZ750に変更です。
更にシステムアダプターもRM-D3KからD100Kに。リモコンが細身になってます。
本カタログ発行から4年後の2005年。5月に据置型のDTC-ZA5ESが生産完了。12月にはTCD-D100が生産完了となり、
これをもって国内での民生用DATレコーダーがすべて消滅しました。
(業務用はTASCAM(ティアック)が生産を継続したが、2010年頃生産完了。)テープも2015年に生産終了。
この件でDATレコーダーのヘビーユーザーだったシンガーソングライターの山下達郎氏は自身のラジオ番組にて
怒りを露わにしていたという逸話があります。こんな感じで・・・
「ホント、こっちのユーザーの事を全く考慮しないで、ハードを売る時だけ『これからは、コレだ !』という具合に、
騙しに近い事をやっておきながら、撤退する時はさっさと撤退するという・・・
この日本の電機メーカーの酷さであります。」
これらの思い出に残るカタログをここで共有していただき、誠にありがとうございます
日本の家電メーカーの過激な製品開発の熱意を思い出す
オーディオ機器に思い出のある台湾の読者