やはり実用化試験放送だけでは心許なかったかどうかは定かでは無いが、ハイビジョンLDプレーヤーの登場。
当時規格そのものは三洋電機、ソニー、東芝、パイオニア、松下電器産業の5社が1991年に発表したのだが、
実際にプレーヤーを出したのは実質ソニー、パイオニアの2社・5機種にとどまった。
(本機、前機種:HIL-C1(1993.7発売)とパイオニアから出ていた3機種:HLD-1000(1993.9 発売)、HLD-X0(1995.1発売)、
HLD-X9(1996.10発売)。一応パナソニック、日立からも出ていたのだがどちらもOEM。)
ハイビジョンLDプレーヤーの販売はソニーのほうが早かったのね。というよりパイオニアのほうに意図的要素が?
後出に掲載の液晶プロジェクターが出てきたところから、ホームシアターを意識した写真なのですが・・・
前出のように部屋を暗くして視聴する場合、筐体が明るすぎると浮いてしまうと云うか、却って視聴の妨げに
ならないのだろうか。前機種はチタニウムグレーのみだったのだが、本機では何故かゴールドも。
他(パイオニアの製品?)に倣ってのことか、かつての上位機種:MDP-999に倣ってのことか、どちらなのでしょう?
それともその逆にチタニウムグレーの設定が他(ヤマハのオーディオ機器がこの頃そういう傾向だった)に
倣ってのことなのだろうか? でもヤマハのほうはチタニウム”シルバー”って云っていたような・・・
あとリモコンなんだが、10キーが無いというのがかえって斬新にみえてきた。これも他だと主要ホタンが自照式に
なったりして、これもどうなのか?って思ったぐらいなので。
なお性能とかに関して、詳しくは後出にテクノロジー・ナウを併記しているので、そちらも参照してください。
コメントもそちらにて記載します。
下半分にハイビジョンLDのソフトが幾つか挙がってますが、実を云うと映像ではこちらに分があるのですが
逆に音声については、むしろNTSC(通常)盤のほうがかえって良い場合があったりしたのです。
まずハイビジョンLDの音声仕様に関しては3通りあって、1,2はハイビジョン放送と同等で、どちらかの方式で
フォーマット必須。3はCDと同等で、フォーマットはオプション扱いです。
1,Aモード(fs:32kHz、8bit準瞬時圧縮/伸張(DPCM)方式・14bit相当、4ch(3-1ステレオ)、MUSE圧縮)
2,Bモード(fs:48kHz11bit・DPCM方式・16bit相当、2ch/ドルビーサラウンド、MUSE圧縮)
3,EFM(fs:44.1kHz、16bit直線、2ch/ドルビーサラウンド、非圧縮)
一方のNTSC盤ですが、音声に関しては元からのFM音声(アナログ)、EFM(前記と同様)、そして本機の
発売から約1年後にドルビーデジタル(AC(Audio Coding)-3)が追加されることとなった。
まあ尤も本機にはそれに対応する術が無い。ドルビーデジタル音声の再生には再生機側のAC-3端子と
それに対応したサラウンドデコーダーを要する。パイオニアが「敢えて」HLD-X0/X9の発売を遅らせたのは、
それに対応させるためのことだったのか?
挙がっている大半の作品はどちらかのモード音声+EFM音声なのだが、一部EFM音声の無いソフトも。
このページ内のものだと
Aのみ:「アトランティス」、「ツインズ」、「ティファニーで朝食を」
Bのみ:「ダンス・ウィズ・ウルブス」、「氷の微笑」、「チャーリー」、「ユニバーサル・ソルジャー」
「リバー・ランズ・スルー・イット」
画像で物語れる作品ならともかく、音響効果がものを言う作品だと楽しみも半減しないだろうか?
マトリックス4ch(ハイビジョンLDソフト) vs ディスクリート5.1ch(ドルビーデジタル対応ソフト)だと
音響効果は後者の方に分があるかと。ましてやNTSC盤のほうも画質の向上はあって、THX-LDやら
ワイドニューマスター盤、米国盤ではあるがクライテリオンレーベルとかあったからね。
ソフトの価格の差が少なくとも倍はあったから、なかなか普及には至らなかったかと。
前出のTHXについて補足を。
「映画制作者の意図をそのままに」を合言葉に、ジョージ・ルーカス率いるルーカス・フィルム社考案による
プログラムの総称で、そのうちの1つがパッケージ化のTHX-LD。テレシネ作業からマスター作成・編集・
プレスに至るまで、映画関係者立ち会いの元に行われその都度かなり厳しいチェックが入る。
最終チェックに合格したものにようやく認定が下りるという。
ちなみに”THX”の意味はデビュー作”THX-1138”と、プログラム総指揮のトム・ホルマン氏のイニシャルの
ダブルミーニング。他に映画館そのものに対してのTHXシステムと民間用に合わせたホームTHXシステム
並びに民間用機器そのものに対して基準を設けたTHX-ultra/selectがあるけれど、かなりの量になるので省略。
こちらにもテクノロジー・ナウ版のカタログがあります。
確かにコピーから察しても型式に”ES”の2文字を入れてもいいような本機種ではありますが、この頃まではまだ
映像機器までには”ES”の冠は無かったかと。でも、なりふり構わず(ん?)付けるようになったのは1990年代後半に
入ってからかなあ。カセットテープとかMDやらDATとかに(デッキじゃ無く記録媒体のほうにね。)付いたのは。
ピックアップ部は何気に凝ってる。フォーカス精度の向上のため、電気的じゃ無く敢えて光学系にメスを入れるとは。
で、電気的にはバランス伝送のみにするという。パイオニア・HLD-X0とは真逆のやり方で。
(HLD-X0では、以前の機種(LD-X1,S1)に使用されたアキュフォーカスシステムという4分割されたフォトディテクター
上のビット走行方向に対し、前後の検出時間差を演算・補正するという方法を取っている。)
NTSC盤向けの画質向上対策の3つの柱、3次元Y/C分離・デジタルクロマノイズリダクション(DCNR)・
デジタル・タイム・ベース・コレクター(TBC)。初めの2つについては意外にも搭載したのはソニーでは本機が初。
DCNR・TBCについては、やはりパイオニアが先だったが(DCNR:LD-X1 1989.12、TBC:CLD-970 1988.10)、
(注:動画にまで対応させた形(3次元DCNR)としては本機が初。またTBCも信号変化の補間仕様ありというもの。)
(動き適応型)3次元Y/C分離回路については意外かと思われるがケンウッド・LVD-Z1(1992.11発売)。
特に3次元Y/C分離に関しては、本来この技術はクリアビジョン(EDTV)での画質向上のための回路だった。
では、何故映像機器関連を殆ど扱っていなかったケンウッドがいきなりこういうことが出来たのかというと、
1980年後半から東芝との業務提携があったから。音響機器関連のOEMをケンウッドが担っていたこともあり、
映像機器関連-特にEDTV関連技術-においての提携があった。
現に東芝はビデオデッキにおいて、まだ他社が3ラインコムフィルターでの画質向上に躍起になっていた頃に
上記の3回路の1つ・3次元Y/C分離をいち早く導入していた(A-L91 1989.11発売)。
ただフレームメモリーに関してはハイビジョン/NTSC盤共に適応。これは本機が初となるが、何か後手な感も。
だからというわけではないが、「ハイビジョンにおいてはうちのほうが分があるぞ!」と云わんばかりに
MUSE系の画像向上には力を入れているということでしょうか。TBCをパイロット信号と水平同期信号の
双方に関与する形にし、オーバーサンプリング変換をもやっているよと。
あと、ダイレクト映像出力という方法で画像処理をモニター側のほうに委ねるというのも1つの手かと。
音響系はというと、アドバンストパルスDACにフル・フィードフォワード・デジタル・フィルターと
云う構成は殆ど同時期の発売されたCDプレーヤーと同等。専用電源系もESシリーズ仕様という具合。
(DACはCDP-ESJシリーズと同等。フィルターにいたっては当時の機種・CDP-XA_ESと同等!)
音響系に気を遣った(当時の音響機器とほぼ同等な)機種は他には前出のケンウッド・LVD-Z1ぐらい?
(ちなみに使用DACはフィリップスで採用していたビットストリーム・1bitDAC(通称:DAC7)だった。)
惜しむべき処は、やはりAC-3出力。ドルビーデジタルに対応出来ていればなあ。
ヴァージョンアップによる対応って無かったのかな?